「麻績暮らし~移住者インタビュー vol.2:寿永岳史さん」

2014年02月26日

おかげさまで前回ご好評をいただきました「麻績暮らし~移住者インタビュー」

 第2回目は聖地区に移住された「寿永岳史」さんにお話しをお伺いしてきました。

 聖地区は麻績村北部に位置する聖山高原県立自然公園内にあり、三峰山、聖山の山麓の標高900mから1200mに広がる森の中にある別荘地を中心とした地域です。

  昔からものづくりが好きで、なぜか森の生活にずっと憧れを持っていたという寿永さん。神奈川でサラリーマンをしていましたが、ある一冊の本との出合いが人生を変えることになります。

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目指すはスリムで コンパクト、インパクトのある暮らし」

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寿永 岳史 さん

出身地:大阪府
移住歴:3年
現住所:聖地区


プロフィール:大阪生まれ。3歳から大学まで東京近郊のベッドタウンで育つ。大学では電気化学を学び、ガラス会社に就職。車両系のガラスの開発に携わる。30歳を目前に自分の生き方を問い直していた時期、非電化による環境技術の開発をすすめる藤村靖之氏の本に出会い感化。藤村氏が主催する「発明起業塾」に通い、田舎での仕事のつくり方を研究し始める。その後、那須の森の中で暮らしていたが、東日本大震災を期に麻績村に移住。セルフビルドを楽しみながら、エコでスリムでコンパクトな生活を目指して奮闘中。


Q、麻績村に住もうと思ったきっかけを教えてください

 小さい頃からもの作りが好きで当時の夢は大工さん。でも「お前が家を建てたら曲がった家が立つ」と家族から大反対され、そうかもしれないと思って諦めました(笑)。 大学では電気化学を学び、ガラス会社に就職し、車両系のガラスの開発を31歳までやっていました。しかし、メーカーは30歳過ぎると現場ではなく管理側にまわされます。人を使いつつ、まわりの人たちとうまくやらないといけない。僕の苦手な所です。それよりも技術者として日々現場に立ち、手仕事を続けながら、空いた時間で畑仕事をするような、自然に沿った暮らしをしたいと考えていました。ちょうどその頃、藤村靖之(※注1)さんの「愉しい非電化」という本に出会い、衝撃を受けたんです。

 早速、モンゴルでの非電化冷蔵庫の活動を見に行くツアーに参加し、その後、藤村先生の発明起業塾に通い始めました。塾の終了後、弟子になり、1年間先生の所に住み込みで大工の基礎などを学びました。それから、NPO法人の事務局の仕事を手伝ったりしながら、那須の製材所に勤め始めたのですが、その年の3月に東日本大震災があり、家も崩れてしまい、さらには放射能の汚染もひどく、色々悩んだ末、移住を検討しはじめました。

 友人が安曇野に移住することになったのをきっかけに、自分も長野県内で移住先を探し始め、グーグルマップで森がある所などを検索しながら、気に入った土地が無いか調べていました。長野県内の空き家バンクを調べていたところ、ちょうど麻績村の空家バンクに掲載されていた物件の中に、値段が手頃でアルプスの眺望も美しいと書かれていたものを見つけ、早速役場に連絡を取りました。村内を案内してもらいながら、色々な物件をみせてもらい、その中で別荘地にいいところがあるとの事で、この物件を見せてもらいました。引っ越してすぐに住めて安いということと、なによりも森の中というこの環境が気に入り、ここに決めました。もともと人のいない森の中に住みたかったので、隠れ家みたいでちょうど良かったんです。


※注1 藤村靖之氏...非電化工房、発明工房、発明起業塾主宰。大阪大学大学院卒業 工学博士。コマツ技術研究所にて熱工学研究室長などを歴任。1984年に(株)カンキョーを設立。1999年には(株)発明工房を設立。発明起業塾塾長も務める。科学技術庁長官賞、発明功労者賞などを受賞している。おもな著書『愉しい非電化』(洋泉社)、『さあ、発明家の出番です』(風媒社)、『テクテクノロジー革命―非電化とスロービジネスが未来をひらく (ゆっくりノートブック)』(辻信一氏と共著・大月書店)、『月3万円ビジネス』(晶文社)      

非電化工房 
http://www.hidenka.net



Q、実際に麻績村に暮らしてみてどうですか?また、寿永さんの住む聖地区とはどのような地域ですか?

  僕の住む聖地区
はもともとが別荘地で、農山村では無くまさに森の中。田舎暮らしというか実際は森の暮らしなんですね。冬の自然は厳しいですが、気ままで快適、精神的にものんびりできます。軽井沢の高級別荘地のイメージとは違い、森が好きで、森の中で自給自足したくて来ている人が多い気がします。麓の麻績村内に田畑を借りてお米や野菜をつくっている人も多いです。そして、みんな自由に各々やっていて、面白い人が多い気がします。でも高齢化が進んでいて、10年後には僕しかいなくなってしまうのではないかというのが心配です。

 この前東京にいったら、人が多くて、もう早く帰りたい、もうここには住めないなと思いました。実家に帰ると山が無くてひたすら平野が広がっているので落ちつかないんですよ。山に囲まれている方が僕は落ち着きます。麻績村や筑北ぐらいの狭さが良いです。善光寺平は人が多いし、車が多くて落ち着かないんですよね。

 聖高原
の夏は涼しいのでエアコンもいらないし、冷蔵庫もそんなに使わないです。どこに電気がかかるかというとやっぱり冬なんですよね。冬はマイナス15度くらいまで冷え込み、雪も50cmくらい積もります。給湯と調理と暖房は薪でやろうと思って、麻績村に来た時に家の風呂釜も薪のものにしました。薪は麻績村には村有林が多いのでその点ではいいと思います。今の森林の問題は個人的に土地の権利が分かれていて手入れができないことなのですが、ここは業者が一括してやっています。ぼくも自伐が出来ればと思い、去年から伊那の森林塾で木の切り方を教わりはじめました。現在生活に使う薪のほとんどは、自宅付近の森から切り出したもので自給しています。

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2年前くらい前からは、ロケットストーブやTLUDストーブ(※注2)といった、熱効率のとても良いストーブ作りに興味を持ち始め、自分なりに色々と研究・工夫しながら自宅の暖房として活用しています

※注2 ロケットストーブやTLUDストーブ...通常の薪ストーブに比べて、非常に熱効率の高い仕組みを持ったストーブ。材料さえ揃えれば、誰にでも簡単に自作することも出来る。詳しくは→http://www.ruralnet.or.jp/gn/201312/woodgas.htm

Q、買い物はどのようにしていますか?

 千曲市内(車で30分くらい)に降りていけば大型店舗があるので不便はしていません。どこかに行って何かを買いたいということも今は少なくなりましたね。

Q、地区の人との付き合いはどうですか?

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 ご近所の方とは親しくさせてもらっていて、お米や野菜を自給されている人からいただく事もあります。集まりも年に2回ほどで、2月の初めに新年会と、春に聖湖のまわりを掃除して、年間の決算をしたりするくらいです。区長や公民館長、清掃当番など区での役割もありますが、別荘地ということもあり、他の地域に比べると、付き合いや集まりなどは少ないと思います。去年は村内の市野川地区の人と一緒にバス旅行に行きました。


Q、麻績村の他の地域の人とも交流が活発ですが、どうやって関係を作りましたか?

 冬に外での作業中に、聖地区に除雪に毎回くる方と挨拶して色々と話すようになり、「働いてないなら、おれんとこに来い」と言われて、夏山リフトや博物館の受付、草刈りなどの仕事をお手伝いするようになりました。
 また、5月にあったアースデイ長野の上映会で知り合った信州ネットワークの方に誘われて活動を手伝う様になり、地域コーディネーターの講座などにも参加する様になりました。それに、博物館で働いてる際に、お客さんで来た村の人に声をかけていただき「童謡の会」に入会したり、誘われて行った村内の講座でアイスキャンドル祭りの実行委員に参加することにもなりました。 もともと長野には知り合いは一人もいなかったのですが、なぜか向こうから声をかけていただき、つながりが出来ていくことが多いですね(笑)


Q、麻績村に来て良かった点、逆に苦労した点はありますか?

 面白い人が多いような気がします。なんだかんだいいながらも面倒を見てくれていて、人の温かさを感じます。
 交通の便が良く、村内にICや駅もあり、上田や松本、長野、大町まで出て行き易いところも魅力の一つですね。
 苦労したことといっても寒いことくらいで、ぼくの人生だいたい苦労していると周りの方が助けてくれるのでなんとかなっちゃうんですよね(笑)


Q、麻績村の好きな風景はありますか?

 四季がはっきりしていていて、春夏秋冬、全然違う風景になります。紅葉もきれいで、別荘地にはもみじを植えている人が結構いるので、紅葉するととてもきれいです。冬になると夏にあんなに沢山あった草がなくなるのには驚きました。
 秋に物件を見に来た時にはあたり一面すごい霧に覆われ、これは良い!と思いました。特に桑関地区の雲海にはグッときました。春先に坊平地区から抜ける道を通る時、アルプスと雲海がとてもきれいに見えるので、楽しみにしています。あとスキー場の一番上、三峰山の展望台からみた眺望が好きです。聖湖に降りていく時の山並みも素敵ですね。


Q、今後の目標を教えて下さい

 自分自身の手で生活に必要なものを作り出してい生きたい、身の回りの自然にあるものを利用して暮らしたい、そしてお金がかからない暮らしをつくっていきたいと思い、日々できることから実践しています。目指すところは「安定・健康・愉しいくらし」ですね。低支出・低消費エネルギー・非依存型で、食やエネルギーを自給できる「安定」した暮らし、低ストレスで自然にそった「健康」な暮らし、自由・直観にそった「愉しい」暮らしですね!


Q、最後に一言メッセージをお願いします!

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「slimpact」

―これはなんと読むんですか??

「slimpact(スリンパクト)」 

僕の造語なんです。「スリム (slim)」、「コンパクト (compact)」で、「インパクト(Impact)」これが私の目指す道です。スリムでコンパクトだけじゃだめなんです。


―インパクトはどういう意味なんですか?

インパクトは、見た人が「おー!」ってなる。ばかだなこれみたいな。
「人に驚きを与えるような」みたいな意味ですね。「びっくり、そこまでやるか!」っていうインパクトがないと!

―驚きですね。

「すげー!」って言う(笑)


――どうもありがとうございました!

 お話しを聞いて感じたことは、移住には地域の人との良い人間関係を作っていく事が大切だと感じました。人と人との繋がりからまた別の関係が生まれ、循環の輪が出来てくる。それが新しい企画や仕事に繋がっていく。
 途中で「苦労していると周りの方が助けてくれる」とありましたが、私達のインタビューを快く引き受けてくれたこともそうであるように、自分から壁を作ること無く、地域の人との関係を大切にしている姿勢を感じました。「slimpact(スリンパクト)」いい言葉ですね。寿永さんの生き方、応援します!



寿永さんの日々の森暮らしや、「slimpact(スリンパクト)」なライフスタイルを発信するブログはこちらからどうぞ!↓

★宇宙山猫ソラッタ「ソライロオテガミ」★
http://slimpact.blog133.fc2.com/


《取材・編集:麻績村地域おこし協力隊 竹村・白木・関口》

投稿者:地域おこし協力隊

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