古地図で歩く松本城下町

2016年04月11日

五つの国宝天守の一つ松本城天守閣には、多くの観光客が訪れます。

しかし城下町を巡る観光客はまだ多くはありません。

松本城下町は天守と同時に造営され、現在もその名残を見ることができます。

国宝 松本城.jpg

              国宝 松本城

 

松本城は石垣と天守と城下町の3点セットによる近世の城郭です。

城下町は武家地と町人地と、大きく二つに色分けできます。

封建社会では武家と町人が厳然と住み分けられていました。

そして、町人町は城下町を南北に貫く善光寺街道沿いに形成されていました。

 

善光寺街道協議会では松本城下町の名残を今に伝える20の史跡を拾い出し、

これをたどるウォーキング「古地図で歩く松本城下町」を開催します。

「古地図で歩く松本城下町」20の史跡.pdf

 

松本城下町の東西南北四方の出入り口には、十王堂がありました。

十王とは亡者を裁き、死後の行先を決める十人の裁判官ですが、

十王堂には城下町を特別な場所と認識させる意図がありました。

明治の廃仏毀釈で4つの十王堂すべてが廃堂となりましたが、

東の十王堂には唯一当時の十王像が残っています。

東の十王堂の十王像.jpg

    東の十王堂跡の十王像(放光庵所蔵)

 

さらにここには石造地蔵尊も安置されています。

この地蔵尊は今年3月に松本市文化財に指定されました。

東の十王堂、放光庵の石造地蔵尊.jpg

      石造地蔵菩薩立像(放光庵所蔵)

 

松本藩の廃仏毀釈といえば、全国有数の激しさで知られています。

維新前の松本城下町図には多くの寺院が軒を連ね、

城下町を形成する上で重要な存在でした。

これが明治維新とともにことごとく破却され、多くの貴重な文化財を失いました。

そんな中、かろうじて残された建造物は、松本城下町では特別な意味を持ちます。

 

伊勢町の浄林寺は小笠原氏ゆかりの寺として、城下町とともに歴史を刻んだ松本の名刹。

明治5年(1872)に廃寺となり、同17年に再興されました。

弘化3年(1846)建立の鐘楼は、諏訪立川流2代、立川和四郎富昌の建築と言われ、

見事な龍の彫刻は地元伊勢町の原田倖三郎作といいます。

浄林寺鐘楼.jpg

             浄林寺鐘楼

 

完全に廃寺となった念来寺跡には、鐘楼だけが残っています。

高さ12.67メートルの巨大な鐘楼を見るとき、

この寺がどれほど壮大な伽藍を有していたかが分かります。

天台律宗の念来寺は、木食行や仏像彫刻により、

檀家によらず、広く信仰を集めた庶民の大寺でした。

鐘楼の軒裏全面に施された雲形の彫刻が、往時の壮大さを物語っています。

念来寺鐘楼軒裏の雲形彫刻.jpg

        念来寺鐘楼の雲形彫刻

 

城下町といえば、お堀。

松本城には三重の堀が城内を囲っていました。

一番外側の総堀には土塁が築かれていました。

現在6か所に残存土塁を見ることができます。

その一つ、西総堀土塁公園は、個人の庭として残った土塁跡を

整備保存した公園です。

西総堀土塁公園.jpg

           西総堀土塁公園

 

明治維新により、堀は埋め立てられ、同時に土塁も削りとられました。

四柱(よはしら)神社の境内も総堀の埋め立て地ですが、

ここにもわずか総堀が残っています。

 

四柱神社には明治における国家神道の事務分局が置かれ、

明治13年(1880)明治天皇巡幸の際、行在所(あんざいしょ・天皇の宿泊所)となりました。

巡幸に合わせて新設された御幸(みゆき)橋は、当時残っていた総堀を渡るための石橋でした。

その後堀の埋め立てが進み、現在は橋の下に申し訳程度残るのみとなりました。

四柱神社御幸橋.JPG

  縄手通りから四柱神社へ、御幸橋を渡る。

 

四柱神社の近くには大手門がありました。

大手門は城内への表玄関。高い石垣の楼門で、

明治に入り真っ先に破壊されました。

この石垣の材で作ったのが御幸橋です。

 

明治初頭、大手門周辺は学校や役所が新設され、

劇的に変化していった場所です。

 

現在、これらの史跡には案内板が設置され、往時の様子を伝えています。

松本市は平成33年を目標に南西外堀の復元を計画しています。

外堀跡には店舗や住宅が建ち並んでいますので、

立ち退き交渉を一つ一つ進めながら、

外堀復元という大事業に挑んでいます。

西外堀復元予定地2.jpg       

        道の左側が外堀復元予定地。

 

松本は善光寺街道の宿場町でもあります。

街道の宿場町はそれぞれ違う背景を持っています。

門前町の善光寺宿や峠の麓の間の宿、街道整備に伴った新設の宿場町など、

全く違った町の個性が街道で結ばれていました。

ふるさと創生が叫ばれる昨今、私たちはこの視点を大切にしたいと考えています。

 

松本は史跡めぐりの整備や、そのための公衆便所も充実しています。

松本市民はこれを生かさない手はありません。

4月16日(土)開催の「古地図で歩く松本城下町」に参加して確かめてください。

告知チラシ  .pdf

 

 

投稿者:善光寺街道歩き旅推進局

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